ため息

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ため息が出た。
ふたつのことに、私は少しだけ驚いていた。


ポカポカととっても暖かい日の午前中。
私は、バルコニーで洗濯物を干していた。
洗いたての夫のシャツをハンガーにかける。


ひとつめの驚きは
お洗濯をしていることが
こんなにも幸せだったということ。
あれほどまでに家事を嫌っていた私なのに。
ふたつめの驚きは
幸せすぎて出るため息もあるんだということ。


優しすぎる夫。
建売だけど、素敵な二人だけの家。
お腹でスクスクと育つ私たちの子供
女の子であることに、夫はとても喜んだ。


何を考えてみても、そこには幸せがあった。
きっと今、私は世界で最高の幸せ者に違いない。
そんな確信が持てるような気がした。


ため息がでた。
「編集長、大丈夫ですか?」
オフィスの雑踏の中に引き戻されていた。
地位、高収入、タワーマンション、外車、ブランド物。
望んだものはすべて手に入れた。


主婦にこれらは、まず手に入らない。
仕事に生きる私だって、十分に幸せなはずだ。


私は再び、仕事の渦の中に飛び込んだ。



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