仕事

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生きるためには、おおよそ働く必要があるはずです。よって多くの人はそれぞれ仕事に生きることになります。仕事とは、生活を維持するためのみではなく、自分の存在意義を見出すためや、生き甲斐をもつことにも貢献してくれることでしょう。人生における仕事の位置付けはそれぞれであるものの、仕事の中にもさまざまなドラマが生まれることになるはずです。そんな彼や彼女の仕事に関する1シーンを切り取ることで、短編小説が出来上がります。

■作品一覧

彼女の出勤前のひととき

ユーミンの昔の曲が突然リビングに流れ出した。私は、ピンクのバーキンから、2つあるスマホのうち1つを取り出た。素早く着信ボタンをタップし、手グシで髪をかきあげてスマホを耳元にあてる。「もしもし、アキです」トーンは、意識していつもよりも高め...

激しい雨の憂鬱

スコールのような雨だった。夏の終わりの昼下がり、厚く黒い雨雲が空を覆っていた。ワイパーが扇状にフロントガラスを行き来する。洗車機の中にでもいるかのように、前方の視界が歪んだ。それでも俺は、歩道の人の動きに注意をはらっていた。30メートル...

暴落の代償

6台の液晶ディスプレイには、数多くのチャートが表示されていた。主要国の市況は、それを見ればリアルタイムに把握できた。連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を、マーケットが好感していた。ニューヨーク市場の大幅高を受け、シカゴ商業取引所(C...

残された自由

精神科医が新たに処方した安定剤は、ボクには少しあわないようだった。たった一錠の服用でも、極度の眠気を誘発してしまう。とてもではないが、執筆を進めることはできない。入稿期日がすぐそこに迫っていた。ボクは、鏡をまな板代わりにして、錠剤をサバ...

残された自由2

めずらしく、作業が順調に進んていた。午前中、出版向けの執筆を一気に進め、午後になって連載の執筆にとりかかった。午後二時頃、薬の作用が切れはじめ、頭の中いっぱいのノイズが執筆を妨げた。しかし問題はなかった。安定剤は、ノイズを完全に除去して...

日の出前のリッチマン

「あんたやっぱり、リッチマンさ」俺と同じグレーの作業服を着た男がいった。どこから見ても日本人の彼は、なぜかジミーと呼ばれていた。60歳を超えているように見えるが、案外若いのかもしれない。いくらかの金を手にした俺は、ここ数日、ドヤを根城と...

成功者の願い

17時40分。定刻通りに新幹線は発車した。ゆっくりとすべるようにホームを後にする。グリーン車両最後部の席で、私はリクライニングシートに身を任せていた。長引いた打ち合わせは、その甲斐あってか、大きな商談2件、まとめることに成功した。翌日に...

夢の定義

「おいあんた、カネ忘れてるって!」背後からの声に振り返ると、甚平姿の初老の男が立っていた。ATMの現金取り出し口を指差している。「すみません。うっかりして」「うっかりってあんた、高い利子のついたカネ引き出して、それ忘れるんかい?気をつけ...



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