人生

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長く生きていれば、誰もが様々なことに遭遇するはずです。それは、辛く苦しいことかもしれません。また、心躍る素敵なことかもしれません。様々な小さな出来事は、長い時間をかけて人生という大きな作品に仕上がっていくことでしょう。ここでは彼や彼女の人生のそんな1シーンを覗いてみることにしましょう。

■作品一覧

南の島の過ごし方

「隣の島に渡らないか?ボートで行くことができるんだ。弁当付きで60ドルだよ」アジア訛りの英語がそういった。ペーパーバックスから目を離して顔を上げると、意外にも大柄な黒人が立っていた。笑顔からこぼれる歯の白さが際立つ。「いや、やめておくよ...

妻とのドライブ

「どこへ連れていくの?」助手席の妻がきいた。私の運転で家を出発してから3度目の質問だった。「それは、着いたときのお楽しみ」私の答も3度目だ。自営のため定年はなかったが、それでも60歳をむかえたのをきっかけとして、私は会社の運営を息子に任...

つぶやき

木漏れ日の中私たちはゆっくりと歩いていた。会話はなかったけれど時折見つめ合い笑顔を交わした。公園の周囲は随分と変わった。木々の向こう側には高層ビルが見える。私たちの愛は変わることがない。愛する夫は私をいつも守ってくれた。力強かったあなた...

巡る夏の中で

フロントウィンドウに、透明で静かな海が広がっていた。「夏はやっぱり海だよね」君はそういってボクの腕に絡みついた。 デニムのショートパンツに流行のプリント柄の白いTシャツの君。マリンブルーの海と、まぶしいほどに白い雲。感動的なまでの夏の光...

峠の向こう側

峠の入り口にバイクを停めていた。ベールが開かれるかのように朝靄が左右に抜けてゆく。俺はバイクのエンジンを始動した。眠りから突然起こされたエンジンは怒りにも似た甲高い雄叫びを上げる。着慣れたライディングスーツは身体にフットしていて心地良い...

ライダーが愛したもの

そのバイクショップは、偶然か戦略か、峠に続く県道沿いにあった。そしてそれは、必然的な結果として、多くのライダーが集う場所として繁盛していた。ボクは、ショップの前にXJR400Rを滑り込ませた。サイドスタンドを出してエンジンを切る。フルフ...

軌道修正の自由

やってきたバスに飛び乗ったオレは、バスの最後部座席に珍しい顔を発見した。「あれ?」進学校の制服を着たそいつは、分厚い本に目を落としていた。だらけたシャツにズボンのオレとは大違いだ。「やっぱりそうだ。ヨウスケじゃん」オレはそういって彼の隣...

父の誇り

パジャマ姿でダイニングに行くと、息子が茶碗の白米を勢いよく口に詰め込んでいるところだった。週末の朝にもかかわらず、息子は学生服に着替えていた。「おはよう」私は、息子に声をかけた。息子の代わりに、キッチンで弁当を作っていた妻が「おはよう」...

大航海

流されていて良いのだろうか。時間はただ過ぎていく。このままただ老いていく。死を迎えるその直前において大きな後悔を背負うことにはならないか。「一度きりの人生」という。「いつかは」ではなく今始めるべきなのではないか。未来を変えることができる...

夢の途中

午後六時前だからか、定食屋にまだ客はいなかった。「おばさん、焼肉定食お願いします」厨房にそう叫んだボクは、作業服を脱いでTシャツの袖を捲り上げる。緑色のカラーボックスの中に乱雑に置かれていたコミックの中から、お気に入りの一冊を取り、店の...

待ち合わせ

夕闇迫るカフェに私はいた。大きな窓の外には、街路樹が風に揺れる。待ち合わせの時間をすでに1時間も過ぎていた。あなたはいつも私を待たせるよね。スマホを何度も見るけど、既読さえつかない。当然のように電話はない。私は席を立った。カフェを後にし...

道に迷う

近道をするつもりで小道に入り、道に迷った。「ナビのない車なんか、あり得ない」はじめての田舎道を右へ左へとまがっているうちに、どちらに向かっているのかさえわからなくなった。どちらに向かえば大通りに出ることができるのだろう。どこかで停まって...

春の陽の光

春の陽の光はとても優しくあたたかい。日曜日の朝私は一人で公園に来ていた。多くの人がマラソンをしていたけど私はゆっくり歩くだけでいい。春のお花の香りがする。なんというお花だったかは忘れてしまった。生ることってとても素晴らしい。こんなにも素...

流されるがままに

これまでいい事なんか全然なかった。小さな灯は、すぐに消えてなくなった。これまでいい事なんか全然なかった。闇の中で震えることしか私にはできなかった。「私の人生ってどうなってるんだろう」自分に問いかけてみても答など出るはずもない。闇に向かっ...

大きくなったら

鍵穴に鍵を差し込んで右に回す。俺はゆっくりドアを開けた。「ただいま」誰からの返事もなかった。一階のリビングに人影はない。最近では珍しくなった柱時計が、カチ、カチと大きな音を立て、0時30分を指している。一銭の金にもならない連日のサービス...



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