あなたの事が
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私は心の中でつぶやいた。
あなたを前にしたって、
そんなことを口にはできないから。
あなたを前にすることさえできない。
ふたりは、明日からは別々の道を行く。
だから、もう一度だけ言わせてほしい。
あなたを見ているだけで
とっても幸せだったんだよ。
最後だからこそ、あなたを見送ろう。
あなたが小さくなって見えなくなるまで
あなたの姿を記憶に焼き付けておこう。
思わず笑みがこぼれる。
ついでに涙が頬を伝う。
そして、急に反対方向へ駆け出した。
忘れものでもしたのかな。
私は急いで頬の涙をぬぐう。
駆け抜けなかった。
ちょっとだけ切れた息で、あなたは言った。
「え?」
「俺、ずっとお前のことが・・・」
「え?」
あなたの顔はいつになく緊張していた。
私の胸は、いつものようにドキドキとしていた。
「うん」
だからこそ、
声に出して言うべきなのかもしれない。
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