いじめの理由

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「なんでクラスメートをいじめたりするんだ」
 ハゲ鬼がオレに怒鳴った。ハゲ鬼は、オレがつけた担任のアダナだ。昼休み、オレは教員室に呼び出されていた。うぜえ相手をいじめて何が悪い。
「彼がお前に何をした?」とハゲ鬼がいった。
「別に」とオレは答えた。
「お前、中2にもなって理由もなく弱い者いじめか?」


 オレは、一発殴られて教員室から開放された。教育委員会にうったえんぞ、あの野郎。
それにしても、今日はついていない。


 教員室から出て体育館脇の廊下を歩いていて、三年生の三人組にすれ違った。
「おー、リュウジじゃねえか」
 三人組の一人、ヤスオが俺にいった。ヤスオは、落ちこぼれ上級生だ。
「ちょうどいいや、体育館の裏までつき合えよ」
 ヤスオのその言葉で、他の二人がオレの両脇に立った。ついてねえ日はこんなもんだ。


 体育館の裏に誰もいなかった。オレは二人に両腕をつかまれていた。ヤスオがオレの前に立った。
「何の用だよ」とオレはヤスオにいった。
「おいおい、上級生にタメぐちかよ」
 ヤスオはいきなりオレの顔面を殴った。一瞬、目に火花が散り、直後に視界が暗くなった気がした。


「なにすんだよ!オレがお前に何したんだよ」
 オレは力を振り絞ってそういった。
「別に」
 ニタニタと笑いながらヤスオは答えた。
「お前、理由もなく人をなぐるんか?」
 ムカツキながら吐いたその言い分に、覚えがあった。ハゲ鬼と同じことを言っている自分に気がついた。


「お前ら、そこで何してる!」
 声の方向にハゲ鬼がいた。
「やべえ!」
 ヤスオたちは、ハゲ鬼と逆の方向に走り出した。どういうことだ?とオレは思った。殴られたためか、頭がうまくまわらなかった。
 とにかく。無意味ないじめには、納得がいかなかった。



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