映画のような出会い

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映画のような出会いは本当にあるのだろうか?
そう考えた直後、俺はありえないと結論を下した。
映画に出てきた数々のシーンは、確かに日常としてありそうだ。
しかしそのシーンの繋ぎ合わせは、決してありふれたものじゃない。


映画のような出会いは本当にあるのだろうか?
そう考えた直後、私はありえないと否定した。
肉食系男子の多くは、ストリートで出会いを求めることだろう。
街で声をかけられたりもするけれど、それは出会いと呼べるかな。


そもそも俺には運というものがない。
仕事は頑張っているつもりだったが、高い評価は得られない。
デイトレードで大金稼ぐ友人や、彼女に不自由しない同僚。
俺だって彼女がほしい。開運の切っ掛けが必要かもしれない。


恋愛は少なからずあったけど、その多くは失恋で幕。
そんな失恋相手の中には、真剣に結婚を意識した男もいた。
でもそれは、今では日記だけが覚えてる哀しい過去だ。
私にとっての素敵な出会いなんか、本当に訪れるのだろうか。


週末に一人で映画館もないよな。
俺は足早にスクリーン正面の出口へと向かった。
出口の扉に手をかけたとき、「キャ」という女性の声を聞いた。
振り向いた瞬間に、女性が俺の胸に飛び込んできた。


週末に一人の映画館はとても惨め。客のほとんどは彼氏連れ。
しかも慣れないパンプス。誰に見せるわけでもないのに。
そう思った瞬間に足元のバランスを崩した。
「キャ」私が倒れるその方向で、長身の男性が振り返った。


俺の胸の中で、俺に抱かれたかわいい女性が俺を見上げていた。
さらさらの長い髪が美しい。ラベンダーに似た香りがした。
「大丈夫?」彼女が怪我をしていないか気になった。
「すみません」顔を赤らめた彼女は、俺の胸の中でそう答えた。


ジャケットを通しても、男性の胸の厚みが感じ取れた。
彼はイケメン系の素敵な男だった。こんな男に突然抱かれていいわけ?
「大丈夫?」と彼がいった。なぜそんなに優しい顔ができるの?
「すみません」申し訳なく思いながらも、私はまったく動けずにいた。


映画のような出会いも、もしかしてありかもしれないと俺は思っていた。
映画のような出会いも、もしかしてありかもしれないと私は思っていた。



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