満天の星
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そう言い出したのは彼女だった。
「良くわからないけど見たくなったの」
これまで耳にしたことがなかった。
だからこそボクは
彼女にそれを見せてあげたくなった。
星はいくらでも見えるはずだった。
天文学や気象学に無知なボクにも
それくらいは推測できた。
ある離島のスポットを見つけた。
一週間ほどスケジュールを調整し
ボクはその島に彼女を連れ出していた。
満天の星がふたりを包み込んだ。
頭上でひと際明るく輝く星を
彼女は指差した。
七夕祭りの織姫星としても
知られている。
彼女はそう言って
天の川の対岸に輝く白い星を指差した。
発音が難しくその星の名を聞き取ることができなかった。
ふたりは黙って満天の星を見続けた。
「ありがとう」
彼女は泣いていた。
その時まだ、ボクは知る術がなかった。
流れ星が
星空を斜めに切り裂いた。
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