懐かしい曲と昔の記憶

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今日もまた、深夜になってしまった。オフィスを出て駐車場に向かい、車に乗りこんでエンジンをかけた。わずかな振動とともに、エンジンが静かに始動する。次の瞬間、FMラジオから昔懐かしい曲が流れ出した。


それはボクがまだ学生の頃、波乗りに行く途中の第三京浜で耳にしたサザンの曲だった。
音楽は、これほどまで鮮明に記憶を呼び起こすものなのだろうか。波乗りにまつわる思い出が、まさに湧き上がる泉のように、浮かびはじめた。


茅ヶ崎のあのショップは、まだあるだろうか?彼は今頃、何をしているのだろう?その後医師と結婚したという彼女は今、幸せだろうか?湧き上がる数々のシーンは、すべて10年以上も過去のものだ。ボクはその頃の光景をフロントガラスに重ね合わせた。


近くのランプから、首都高速に乗った。一気に加速し、そして壁のようなトレーラーを二台やり過ごす。運転席側の窓をわずかに開けた。冬を目前にした東京の大気が、音とともに車内へと流れ込んだ。


―― みんなに会いたい。


そう思った。ただ、その実現について、今はまだ考える余裕がなかった。明日は重要なプレゼンテーションがひかえていた。新規プロジェクトについて、明日までに決定すべき案件が、頭を徐々に満たし始めた。


ボクは、アクセルを軽く踏み込んだ。車はさらに加速する。しかしどんなに加速しても、今の仕事から逃れることはできそうにない。その後、昔の記憶は再び封印され、そしてまた、時が矢のように走り出すのだった。



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