三原色の光をうけて
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「あなたの浴衣姿も、とても素敵」と彼女が笑った。
ボクたちは、ウォーターフロントをゆっくりと歩いた。対岸の街の夜景が見える突堤に腰掛けた。湾内の静かな海面に、輝き始めた街のネオンサインが映って綺麗だ。
黄昏の湾に吹く風は、意外に冷たい。ボクは彼女の肩に手を回した。
「寒くない?」
ボクが聞くと、
「大丈夫、今日はとても調子がいいの」
と彼女は答えた。
「去年と同じ時間、同じ場所でデートがしたい」
そう切り出したのは彼女だった。ボクはその日の仕事をすべてキャンセルし、彼女との時間を作り出した。
「病院まで、車で迎えにいくから」
ボクの提案を、彼女はあっさりと断った。
「去年のように、あなたと待ち合わせがしたい」
それが彼女の願いだった。
「来年も、あなたはここにいるかしら?」と彼女が言った。
「来年も、君と一緒にここにいるよ」
とボクは答えた。
「ありがとう」
少し間を置いて彼女がいった。
続けて、次の黄金竜が天に登る。
「とても綺麗ね」と彼女が言った。
「綺麗だね」とボクは答えた。
いっぱいの涙が、彼女の瞳を揺らしていた。上空からの、三原色の光をうけ、それはきらきらと輝き、そしてこぼれた。
夏のピークが、静かに過ぎ去ろうとしていた。ボクたちにとって、とても大切な夏だった。
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